CoCシナリオ:きのこたけのこ
2016. 1. 19 公開
クトゥルフ神話TRPGオリジナルシナリオ処女作です。私はどちらかと言うとたけのこ派です。
シナリオ名:きのこたけのこ
PL:1~4人
時間:オンセで茶番多めで7時間ぐらい、オフセでサクサクやると半分以下になりそう。
クローズド、時間制限あり、戦闘あり、ロスト確定ギミックあり
参照:クトゥルフ神話TRPG(基本ルールブック)、マレウス・モンストロム。以下で参照ページは(基P.◯)(マP.◯)と表す。
※当シナリオを用いて遊ぶ・改変して遊ぶ・動画作成等の連絡は不要ですが、ツイッター(右上鳥アイコンからどうぞ)等で教えてもらえるととてもよろこびます。またクレジット表記をお願いします。
※当シナリオをそのまま、または二次加工して無断で再配布および販売することを禁じます。
挿絵の作成には「いらすとや」様の素材を使用させていただきました。
★概要
某キノコのお菓子とタケノコのお菓子をお題として連想ゲーム的に作ったものです。ギャグっぽい感じのものですが、それなりにえぐい描写も練り込みました。幼稚園児になって遠足して、怪異に巻き込まれ、公園から脱出するシンプルな構成です。
★背景
ニャルラトホテプは「きのこたけのこ戦争」に興味を持った。人間どもを呼んできて、私なりのきのこたけのこを展開すれば面白いのではないか?お菓子を食べさせるなら複数人の方がいいし、お菓子と言ったら子供だろう。よし、幼稚園児の遠足を引率するていで公園に閉じ込めて観察しよう。
ただの園児では歯ごたえがなさすぎるだろう、より成長した人間の魂をさらってきて園児の体に入れるのがいい。記憶は弄ればどうとでもなる。
楽しい遠足のはじまりだ!
★シナリオ予告
えんそくの おしらせ
あしたは まちにまった えんそくのひ!
おともだちと なかよく げんきに あそびましょう
とき:みなさまの よてい しだい
ところ:どどんとふ
ふくそう:しんでも よい たんさくしゃ
もちもの:くじけない こころ
おやつ:さんびゃくえん まで ばななは はいらない
あなた達は幼稚園児です。シナリオ時は幼稚園の行事で遠足に行きます。探索者は幼稚園児ですが、年齢による能力値の低下などは考慮せず普通に作ってください。虫取り少年なら生物学者、おままごとが好きな子なら料理人や俳優、といった具合で職業サンプルをこじつけてください。SIZ・EDU・STRなどが園児らしからぬ数値になるかと思いますが、園児間の相対値ということにします。なお、年齢設定等をいじって継続キャラを使用しても構いません。
推奨技能:目星
★NPC
成良 都蝶(なるら とてふ)先生:幼稚園の先生。笑顔が素敵な美人。そのまんまニャルラトテップの化身。APP18、全呪文知ってる、あらゆる武器技能100の例の人間態。(基P.221)デフォルトでは「先生」とだけ名乗っておき終わりまで正体がわからなくてもいいし、何先生か聞かれたら素直に名乗ってPLにあからさまな黒幕だと認識させてPC認識との齟齬を楽しんでもよい。化けの皮を剥ぐと闇の魔神に変身する。
来瀬 由香(くるせ ゆか):探索者らと同じく幼稚園の園児。シナリオの調整役、お助けNPC。正体は定めておらず、探索者たちと同じような境遇か、先生の傀儡あるいは化身その2あたりが妥当か。セッションの流れでおいしい設定にする。名前の由来はクルーシュチャ方程式から。普通に探索者を作ってステータス適用するか下記のデータを流用する。
STR14 CON7 POW14 DEX7 APP11 SIZ13 INT9 EDU16 HP10 MP14 SAN70
アイディア45 幸運70 知識80
2015サプリのアニマルセラピストで作成、動物がなつきやすい、特徴表で方向音痴(ナビゲート基本成功率1%、経験ロールによる成長不可)
応急手当70 聞き耳70 精神分析70 追跡70 目星50 跳躍62 ナビゲート1 生物学50 博物学50 薬学26
★場所
奈々篠幼稚園(ななしのようちえん):適当な名前、任意に変更する。シナリオ開始時の集合場所として使うだけ。
奈々篠公園(ななしのこうえん):適当な名前、任意に変更する。探索場所。
★神話生物
不浄のキノコ:本シナリオのものはロビグスのコレクションを先生が盗んで使った設定。きのこ役。(マP.101)
イスの偉大なる種族(旧):精神交換に使う未来の鞘翅類の体を微妙に足りない個体数分先生に拉致され、奪還のためにしぶしぶ遊びに協力することに。飛行するポリプと絶賛交戦中。探索者による鞘翅類の調達が間に合わなかった場合、探索者の体に避難し数年ほどやり過ごす気でいる。たけのこ役。(基P.166、マP.22)
イスの偉大なる種族(新):公園に登場するのはイス人の精神交換を受ける前の個体。先生に[たけのこを選んだ人数]匹を奈々篠公園に拉致され、遊びの道具にされている。探索者たちは普通カブトムシっぽい昆虫としてのみ認識する。
イベント用にDEXを[2D6+6]でロール、回避は初期値として[DEX*2]、他は必要あらばロール。
カブトムシAは確定登場、B以降はたけのこを選んだ人が多ければ登場。データ流用の場合は以下を使う。カブトムシA:DEX12、回避24 カブトムシB:DEX12、回避24 カブトムシC:DEX9、回避18 カブトムシD:DEX11、回避22(基P.167、マP.24)
飛行するポリプ:旧イス人の都市を侵攻中。一回目の精神交換時には破壊の形跡を、たけのこロストでその姿を見ることができる。(基P.186、マP.95)
ロビグス:不浄のキノコに対処したものの前に現れ、詫びと勇敢な行いへの褒美として呪文を授ける。基本的に善良で人当たりがいいが、ドリームランドにてニャルラトホテプの庇護下にあるので、その所業については強く出れず、遊びの興を削ぐような言動はできない。(マP.258)
闇の魔神:先生の怪物態、ラスボス。今シナリオでは耐久力がゼロになった際の毒の雲は演出のみに留める方が使いやすい気がする。(マP.224)
★アイテム
救急箱:一般的な物品と止血帯が入っている。応急手当の成功率[+20]、回復量[+1]。
止血帯:救急箱に入っている。腕や脚を切断した際の出血を止めることができる。
糸鋸:探索者たちの腕や脚を切断できる。枝の剪定用で、基本的に木を切り倒すことはできない。武器として用いる場合、初期命中25、ダメージ[1D4+db]、耐久4。
虫取り網:手の届かない場所のカブトムシを捕まえることができ、カブトムシ捕獲判定時のみDEX[+5]、こぶし成功率[+20]、カブトムシの回避を無効化する。
殺菌剤:不浄のキノコの胞子が肉体に菌糸を張りはじめる前に使うと、胞子を殺菌することができる。ローリスクで呪文を持ち帰ってほしくないため、わかりにくい場所に隠してある。注意書きには、皮膚に付かないよう使用すること、ごく早期に使用しないと木の内部の菌糸を殺菌できないことが書かれている。また開封済みで半分ほど使われていることがわかる。化学などで皮膚に振りかけた際のダメージがわかる。ダメージ[1d6]、皮膚が爛れてひどい水ぶくれができる。
イスの電撃銃:古いカメラのような見た目。故障した回の攻撃はすべて失敗し、機械修理にマイナス補正をかけたものに成功しなければ再使用不可とする。アイディア成功で電撃銃の使い方を理解することができる。博物学・機械関連の技能・オカルト・銃器関連の技能などで、古いカメラのような形だが銃のようなものだということを理解させてもよい。(基P.200、マP.23)
★導入
今日は幼稚園の遠足の日です。先生とお友達と一緒に公園に遊びに行きましょう。小さな幼稚園なので、遠足のメンバーは先生と探索者と由香ちゃんだけです。季節は夏(カブトムシのいそうな時期、後で不浄のキノコに感染するよう腕と脚を露出している必要性から)。
★公園に着くまで
移動手段は徒歩でもバスでも何でもよく、適当に会話と茶番をする。幼稚園児らしくドングリとか木の枝とか拾うといいかも。その間に先生は以下のことを言う。
・きのことたけのこのお菓子を持ってきているので公園についてご飯食べたらおやつに食べましょうと提案
・きのこたけのこの選択のコストと見返りの差異の暗喩をする。「たけのこは幅広い人に受けがいいけど、きのこは好きな人はとことん好きよね」とか
探索者の継続の観点で言うと、きのこはハイリスクハイリターン、たけのこはローリスクローリターンの設計。
★公園に着いたら
公園中央にレジャーシートを敷き、後の展開のヒントとして先生は「風で飛ばないように石とか荷物で四隅を抑えてください」と園児たちにお願いする。レジャーシートの下に埋まっているものはたけのこクエストのクリア報酬なので、大事な部分については先生が真上に座っている、風が強く吹いてきてレジャーシートがバサバサとはためき見ることができない等の理由付けをして見せないようにする。
お昼までの自由時間という体で公園の一箇所に対して探索可能。対人行動とか普通に遊ぶとかスマフォで何か調べるとかも同様の経過時間であれば可能。怪我したら救急箱持ってきてるから先生にすぐ言ってくださいねー、と救急箱の存在を示しておく。救急箱はレジャーシートの上にある。
★公園
周囲を森に囲まれた公園。公園内に居るのは先生と探索者と由香ちゃん、あとカブトムシのみ。入った時点で先生が結界的なものを貼っており、帰ろうとしてもまた公園に戻ってくる(体験者はSANC[0/1])。また外部からは公園内に入れない。スマフォ等で外部に連絡を取って助けを呼ぶ場合は、通信が切れ切れになって途絶える描写を入れてもよい。
調べられるアイコンとして木A~C、ジャングルジム、シーソー、水飲み場を配置。木の色はアイコンとしてわかりやすく付けただけで特に意味はないが、信号のように赤に近づくに従って不穏さが増すようなイメージではある。
木A(緑):カブトムシAがいる。目星・生物学・博物学などで発見が可能。
捕獲したいと言われた場合、幸運成功で手の届く高さにいる。木を蹴って落とそうなどすると飛んで逃げてどこかのアイコンに移動する。DEX12と対抗に成功のち、こぶし等に成功、さらにカブトムシの回避24失敗で捕獲できる。同時に複数人で挑戦すると、1ラウンドに回避は1回しか振れないので、1回避けられても次こぶし等成功すれば確定で捕獲できる。捕獲に失敗すると手の届かない高さに移動するか、別アイコンに移動する。移動先がどこかについては追跡やナビゲートなどで感知できる。
捕獲後に生物系技能などでカブトムシについて調べると、実際のカブトムシとは異なる未知の生物だということがわかる。
樹種について探索者が調べた場合、カブトムシが好むようなクヌギなど以外の樹種を伝える。
木B(赤):付近を目星などで調べると、近くの草むらの中に糸鋸が落ちていることがわかる。
たけのこ選択者が2人以上いる場合はカブトムシBがいる。DEX12回避24でカブトムシAと同処理。
樹種について探索者が調べた場合、カブトムシが好むようなクヌギなど以外の樹種を伝える。
木C(黄):キノコが生えている。目星などで調べると近くに張り紙があること、生物学・薬学・博物学などでキノコが特に有害なものでないことがわかる。
張り紙の内容は、キノコの菌糸が内部まで入り込んだ木や枝は安全性確保のため切除する告知。幼稚園児が張り紙を読めるのかについては、ふりがなの振られた平易な書き方であるとする。木を殴る等の行動をすると、感触や拳を入れた痕から木の内部が菌糸にやられて柔らかくなっていることがわかる。執拗に攻撃を加えて10ダメージ程度入ると木が倒れてしまうことにしてもよい。
たけのこ選択者が3人以上いる場合はカブトムシCがいる。DEX9回避18でカブトムシAと同処理。
樹種について探索者が調べた場合、カブトムシが好むようなクヌギなど以外の樹種を伝える。
ジャングルジム:目星などで調べる、またはジャングルジムの一番上に登ると、一番上に虫取り網が1つ置いてあることがわかる。
たけのこ選択者が4人以上いる場合はカブトムシDがいる。DEX11回避22でカブトムシAと同処理。
シーソー:キノコが生えている。生物系技能でキノコが特に有害なものでないことがわかる。また、シーソーの下に埋まったタイヤの中を調べるか、重点的に付近を調べると、殺菌剤を発見できる。
殺菌剤発見済みでシーソーを調べなおすと、シーソーに殺菌剤が使われた形跡があるが、どうやら使用が遅かったらしく効果がなかったらしいことがわかる。
水飲み場:普通の水飲み場。水は問題なく出るが、カブトムシが来ない限り特に探索箇所はない。
★お昼とおやつ
お昼前の自由時間が終わったら、先生がみんなでお昼にしましょうと招集をかける。みんなのお弁当は何かな的に雑談と昼食を適当に済ませたのち、そのままおやつタイムに突入。探索者が持ってきたおやつをネタに雑談を挟みつつ、きのこのお菓子とたけのこのお菓子を選ばせる。全員がきのこを選んだ場合、由香ちゃんはたけのこを選び、逆もまた然り。他は状況を見て適当に選ぶ。原則どちらか一方を想定しているが、きのこたけのこ両方をもらう人が出ても許可する。選ばない人が出てもシナリオに関われなくなるわけではないのでそれはそれでいいかも?選択の段階で下記の被害に遭うことは決まっているが、「食べますか?」と無意味な選択をしてもらっても悪趣味でよい。
選択により探索者は下記の現象を体験する。この段階で先生は消えているが、その描写については事変後に行う。なお先生は姿は見えないがどこかから一部始終を観察している。
きのこ:1D4と2D10を振ってもらう。探索者は四肢のうちひとつの肘から先あるいは膝から先にぽとりと何かが落ちてきたのに気づく。1D4は四肢に対応し、1は右腕、2は左腕、3は右脚、4は左脚。またこの時点から[2D10]分後に不浄のキノコが肉体に菌糸を張りはじめる。
腕や脚に当たってから地面に転がったそれはマッシュルームのようなキノコだった。しかしその色は絶えず変わり続け、観察しようとしても焦点を合わせられず、まるで視力に障害が起きたかのように感じる。不浄のキノコを見た者はSANC[0/1d4]。
たけのこ:探索者の視界は突如暗転する。気がつくと探索者は何やら見たこともない空間にいることに気づく。探索者は自分の視点が妙に高いことに気づく(具体的には5mぐらい)。足元を見ると、何やら巨大な円錐形の、たけのこのようなものが見える。しかし自分の足元が見える気配はない。
そのうちあなたは気づいてしまう、この巨大なたけのこが今のあなたの体であり、その頂点からは4本のチューブ状のものが生えている。そのうち2本の先端にはあなたの見知った五本指の手の代わりに蟹のハサミのようなものが、背中側の1本の先端にはトランペット型の赤い附属器官が4つ付いている。そして残りの1本はあなたの頭に繋がっており、そこから変わり果てた自分の体を見下ろしていた。SANC[0/1d6]
★事変後
不浄のキノコが落ちてきた上空を見上げても、ただ夏の青空が広がっているだけで何もない。先生が何らかの方法で上空から不浄のキノコを落とした設定。
たけのこを選んだ人の表情が消え、そのうちの1人が抑揚のない声で話し出す。
「申し訳ないが彼らの体を一時的に借りる。突然だが君たちに頼みがある。詳しい説明は省くが、この付近に居る鞘翅類、君たちの文明ではカブトムシと呼ばれる種類の昆虫を[たけのこを選んだ人数]匹捕まえてきてほしい。この時間軸の17時までに捕まえられなかった場合、この体を長期間借りることになる。交換したこの体の精神は今私の体に入っているが、我々は余裕のない状況下にあるので、長期間の精神交換の際は彼らの精神の安全は保証できなくなる。人質を取るような形になってしまうが、どうか頼みを聞いてくれないだろうか。」
友人の中に別の存在がいることを理解したらSANC[0/1d2]。
イエスオアはい質問ですがなんとかする。無事帰れる助けになるものも用意しよう、とかぼかして電撃銃が報酬にあることを仄めかしてもよい。承諾後、
「協力感謝する。捕獲が完了したらまた体を借りてコンタクトする。健闘を祈る。それと、君たちの[不浄のキノコが触れた箇所]についてだが、それはたちの悪いものだ、何とかした方がいいと忠告しておく。」
たけのこを選んだ人に元の精神が戻る。要求があればイス人の体にいる間に短時間の行動をしてもよい。周りには誰も居ない。目星や戦闘技能などで壁に焼け焦げた痕や破壊された痕や何かの体液や肉片の飛び散りがあること、知識・オカルト・歴史・博物学などで壁や床が人間の文明で作られたものではないこと、聞き耳などでそこらじゅうで暴風が吹き荒れる音がすることがわかる。この体の置かれた危機的状況を理解したらSANC[0/1d3]。
目を離した間に不浄のキノコは消えている。キノコが触れた肌には、あのキノコと同じく七色に色彩を変え続ける粘ついたものが付着している。くっついた胞子を他の人にこすりつけるなどの二次感染は大変なのでなしとする。
この辺で探索者には先生が居ないことに気づいてもらう。レジャーシートに文字が書かれている。
「せんせいの きょういくほうしんは じぶんで よくかんがえ こうどうする です
せんせいに たよらず みんな なかよく きょうりょくして がんばって ください
おうえん してるよ!
ぜんぶ おわったら みんなで せんせいを よんでね おわりの おゆうぎを します
ゆうがたまでに かえりましょう かえるまでが えんそく!」
現在時刻は15時。レジャーシートには探索者たちの荷物の他に救急箱と先生の荷物があり、中の運転免許書から名前を知ることができる。
公園に時計はあってもなくてもよい。探索者が時間を把握する手段がない際は適宜KPが経過時間をなんとなく提示してもよい。時間管理としては1行動につき10~15分ぐらい?
★きのこ解決法
水で流したり擦ったりした程度では不浄のキノコの粘着性胞子は取れない。患部の皮や多少の肉を剥ぐ程度ではダメージ[1D3]を負うだけで治らず、肉の色に胞子の色が移っていることがわかる。
菌糸を張るまでの時間に殺菌剤を患部にかけるのが正攻の最短攻略法。他の方法だと、何らかの手段で火をおこし、患部を十分に炙ることでも胞子を殺せる。ともにダメージ[1d6]。
菌糸が育ち始めると、犠牲者は患部から細い糸のようなものが根を張る感覚に気づく。SANC[0/1d2]。この段階まで行くと、患部がある腕や脚を夕方までに切り落とさなければ治療不可になる。
時刻が終盤に差し掛かると患部の根張りは強くなり、肉体は皮膚の内側で変異していき、患部のある肘あるいは膝から先は触覚や痛覚がなくなっていく描写を入れるとわかりやすい。
糸鋸を用意しているが、他の可能そうな切断方法ならば採用する。例えばイスの電撃銃で患部を撃つならば、累計でダメージ6以上で腕や脚を消し飛ばすことができるとする。基本の切断ダメージは[3d3]。ショックロールにより意識不明になればSANCなし、意識があり、かつ「手酷い拷問」に該当するような切断であればSANC[0/1d10]、それよりも苦痛を長引かせず痛みの少ない切断であればSANC[0/1d6]。
腕の場合は両腕を使う行動が不可能に、STRを[1/2切り上げ]に変更、他関連技能にマイナス補正。
脚の場合は両脚を使う行動が不可能に、DEXを[1/2切り上げ]に変更、他関連技能にマイナス補正。
止血をしないとおよそ1行動時間につきHPを1失う。出血は救急箱に入っている止血道具か、他の適切な処置で止められる。木の枝を細工するなどして応急的な義手や義足を装備して能力の低下を補っても良い。
不浄のキノコとの接触から2時間後、17時に手遅れになる。
★きのこ解決時
全員の不浄のキノコが治療済みか手遅れになったら、探索者らの前にロビグスが出現する。
足元の土が不意にボコボコと膨れ上がり、目の前に大人の身の丈を超える巨大なきのこの株が湧き上がるように生える。きのこが外側から蕾を開くように倒れていき、中から見目麗しく体格の良い男性が現れる。彼の傍らには狼と馬が控えており、肩には小さなキツツキが止まっている。
「吾輩は菌糸類の君主、ロビグスである。此度は吾輩のコレクションが迷惑をかけたようで、その詫びを言いに来た。誠にすまなかった。ただ、あの変わったキノコは盗み出されて使われたもので、吾輩がそなたらを害したのではないことは理解していただきたい。そなたらの腕や脚を治すことはできぬが、代わりと言ってはなんだが、その勇敢な行いに敬意を表して呪文を授けよう」
手遅れの探索者がいる場合
「残念だが、そなたはもう手遅れだ。見た目は人のかたちをしているが、遅くとも半年もすれば、体があの虹色のキノコに変わってしまう。その時が来れば吾輩の宮殿に住まうがよい。それまで悔いのないように過ごすのだぞ」
手遅れの探索者は、先程まで患部のある腕や脚に感じていた、菌糸が肉体に根を下ろす感覚が全身に広がっているのを感じる。同時にキノコの影響で、人付合いが悪くなり、暗くジメジメした場所を好むようになるので、そのようなRPをしてもらう。ロビグスは手遅れの探索者に呪文を与えることには意味を見いだせないため拒否する。なお、RP上積極的にはできないが、手遅れの探索者もラスボス戦に参加可能。
キノコに対処した犠牲者は、下記からひとり1つの呪文を獲得できる。キノコ犠牲者が呪文を得るのが望ましいが、本人の要望があれば他の人が呪文を覚えてもよい。
①コルーブラの手(基P.257)
失った片腕のみを毒蛇に変えるなどの描写は燃えるので、コストと威力を抑えるアレンジを施して使用しやすくしてもよい。
②肉体の保護(基P.275)
ラスボス戦前に呪文をかけることを許可してもよい。
③被害をそらす(基P.278)
探索者がロビグスから逃げる、絶叫する、防犯ブザーを鳴らす、あるいは攻撃を加えようとする等の行動を取ると、ロビグスは困ったような笑顔で詫びを言いながら、対象の人物あるいは物品に向けて手を向け、ひとふりで対象をキノコに変化させる。変化させられたキノコはかさを震わせて不気味にハミングしながら踊るもので、もとの人物あるいは物品と同じ大きさ。キノコへの変化はロビグスが任意に解除・再発動が可能。SANCについては記述がないので任意。
ひととおりの処理が終わるとロビグスの周りのキノコが閉じていき、巨大なきのこの株は地中に潜ってしまう。あとには元通りに生えそろった芝生があるのみ。
★たけのこ解決法
カブトムシを[たけのこ選んだ人数]匹捕まえる。素手でも捕まえられるが、虫取り網を使うと簡単。
虫餌を作っておびき寄せる、木に傷をつけて樹液を出すなどされると、未来の鞘翅類の食性がわからないので正直困るが、迫真のRPであったりクリティカルを出したり虫取りでぐだってきたら採用して、餌を食べるのに夢中なカブトムシを自動で捕まえられることにしてもよい。
★たけのこ解決時
全部のカブトムシを捕まえるか時間切れになると、たけのこ被害者のうちひとりの表情が消え、
精神交換したイス人が話し出す。
「依頼達成を確認した。協力誠に感謝する。これで我々は無事脱出できる。君たちもこの悪趣味な空間から脱出できるよう、ささやかながら助力する。あまり遠回しなことはしたくないのだが、こういう決まりなのでね。」
カブトムシが角で地面をなぞり何やら模様を描いていく。
「健闘を祈る。」
カブトムシはどこかへ飛んでいき、探索者は精神交換から復帰する。
完成した地面の模様は平仮名の文章だった。
「いかづちは かぜの もとに おちた」
"いかづち"はイスの電撃銃を、"かぜ"は風ではためくレジャーシートの場所を、"もとにおちた"はレジャーシートの下に電撃銃が埋まっていることを表す。また、強力な風を用いて攻撃する飛行するポリプを倒すために電撃銃を作った、という意味も裏にあり、イス人なりの詩的表現という設定。
ヒントに従いレジャーシートをめくると土を掘って埋め直した痕がある。掘り返すと、たけのこ犠牲者数分の古いカメラのようなものがある。装備する人は問わない。古いカメラのようなものはイスの電撃銃で、アイディア成功で使い方を理解することができる。
時間切れの場合
「時間切れだ。すまないが、約束通りこの体を使わせてもらう。私もここの場所から出なければならない、脱出するまでは助力しよう。」
体を奪われる探索者をたけのこ犠牲者の中からランダムで選び、実質ロスト、協力NPC化し闇の魔神戦をアシストする。
ロスト探索者はやりたければエンディング後にイス人の肉体と電撃銃を使って[1d6+3]体の飛行するポリプとの戦闘を行う。これに生き残れば次の精神交換まで逃げ延びれたこととし、任意の精神交換年数後に元の体に戻れる。
★ラスボス戦
きのこたけのこの成功失敗処理が一通り終わり、探索者たちが先生を呼ぶと、どこからともなく先生が現れる。
「みんなちゃんと自分たちで考えて行動できたかなー?できた人は手上げてハーイ!
きのこのお菓子とたけのこのお菓子、美味しかったかなー?
きのこが好きなお友達は、ちゃーんと辛い決断を自分たちでしたんだよねー?えらいねー!
たけのこが好きなお友達は、おっきなたけのこさんには会えたかな?みんなもたくさん食べてあんなふうに大きくなろうねー!」
「今日はみんな遠足楽しかったね!じゃあ帰る前に、最後のお遊戯をしまーす!みんな準備はいいかなー?じゃあいっくよー!」
先生の体が歪んでいく。細身の体にフィットした服が張り裂け、その裸体が顕になるが、
それは美しい女性の体でなく、人の形を失いつつあった。全身の筋肉が膨張し、どす黒く脈打っている。長い髪は抜け落ち、代わりに黒い剛毛が全身の皮膚を突き破り生えそろう。手足からまるで四足動物を思わせる鉤爪と蹄が伸びていき、筋張り黒黒と輝いている。
その顔はいつも優しい笑顔を浮かべていた先生のものではない。鼻面は醜く伸び、けだもののごとき牙が天を衝き、緑色の目があなたたちを見据える。
それは豚のごとき醜悪な顔でにたりと笑いながら、獣が吠えるような声で言った。
「矮小なる人間ども、帰りたくばこの闇の魔神を倒してみせよ!」
SANC[1d3/2d6](人間から魔神への変身と魔神そのものへのSANC込み)
「帰るまでが遠足と言うではないか!さあ、もっと遠足を楽しませろ!」
闇の魔神との戦闘開始。呪文の使用およびPOW消費によるHP全回復は基本なしの舐めプ仕様。ただし歯ごたえがなさすぎれば適宜解禁して調整する。耐久力が0になった時の毒の雲については演出のみに留めたほうが進行がスムーズ?あえて回避はせず代わりにHP回復をした方が絶望感のある描写になるかもしれない。
★グッドエンド
闇の魔神は引き裂くような絶叫と狂笑が入り混じった声を上げ、煙の塊となって爆散する。むせ返るような悪臭がする熱い煙の中、探索者たちの意識は遠のいていく。
継続探索者からエンドロール。
あなたは自分の寝床で目を覚ます。手足を切り落とした者は肉体に外傷はないものの、シナリオ中で切り落とした部分の感覚がなく、まるでそこだけ魂がないようだと感じる。失ったはずの手足を見るなどした場合、ここで見ている自分の手足が大人のものであることに気づく描写をいれてもよい。男性探索者であれば腕毛やすね毛やが生えていることを発見するのもよい。寝室に姿見等があることにして、それを見るなどすると、きのこ犠牲者、たけのこ犠牲者ともに通常探索者の年齢の外見に戻っている。
幼稚園の頃だから随分昔のことについて夢を見ていたようだと思うが、夢にしてはあまりにも生々しい記憶であり、またあなたにそんな奇妙な遠足に行った過去はないはずで、そもそもあんな小さな幼稚園には覚えはない。
しかし、帰ってきた、という確信と安堵があなたの心を満たし、あなたは再び眠りに落ちる。
なお、ロビグスに踊るキノコに変化させられた探索者には呪いが発動し、自宅の至る所に無毒のキノコが猛烈に生えてくる。
★バッドエンド
闇の魔神の嘲笑うような吠え声が聞こえる。薄れ行く意識の中、もうどこへ帰ることもできないだろう、という確信があなたの心を塗りつぶしていった。
★クリア後
継続探索者は前回セッション時の年齢に探索者を戻す。新規探索者は通常探索者基準の任意の年齢にする。SANや四肢欠損については今セッションのものを反映する。STR、DEXの半減は元に戻す。イスの電撃銃は持ち帰れないが、呪文は獲得できる。
SAN報酬:クリア[1d10]、PC全員生還[1d10]、由香ちゃん生還[1d6]
クトゥルフ神話技能:初発狂[+5]、神話事象による発狂[+1]、イス人(旧)と精神交換する[1d5]、イス人(新)と接触[+1]、不浄のキノコと接触[1d3]、ロビグスと接触[+1]、踊るキノコに変化[1d2]、闇の魔神と接触[1d5]
★友人たちとの初回プレイ時のクリア状況
KPは私、PL4人、オンラインセッションで茶番多めなのもあり7時間ほどかかりました。NPCの由香ちゃん含め全員生還、由香ちゃん含め4人がきのこ犠牲者となりその全員が腕か脚を失い、残りの1人はたけのこを選択、またきのことたけのこの両方を選んだ探索者が1人いました。裁定とロビグスを出すタイミング、闇の魔神の動かし方が甘めだったので、その辺のやりようによっては2、3人ロストが出た気もします。ロビグス出現時に探索者の1人が変質者ー!と絶叫するRPをしたので、ロビグスの設定を活かす好機とばかりに踊るハミングキノコに変化させました。クリア後の彼女は自室のキノコと格闘する生活を送っていると思います。いらすとや様素材を用いたイメージ画像を使った効果もあり、凄惨な口頭描写とコミカルな絵面とのギャップが楽しめたのも良かったです。