top of page

カマイルカ?の左上肢骨格標本

2016. 3. 31 公開

 

 一度組み上げたがホットボンド接着だったために引っ越しに際して壊れたイルカ左上肢を組み直した。ちゃんと組み立てた骨格としてはかなり大型の部類に入る。

 

 遺体の発見は2012年9月、北海道の八雲町の砂浜にて。ほぼ白骨化した全身で脊椎が全部繋がっているという完璧な状態だった。写っている私の黒い靴が27センチなので、全長は2メートル近く、カマイルカかなと思っているのですがどうなのでしょう。ほぼ白骨とはいえ脳とか上腕部とか内臓とかは絶賛腐敗中でそれなりに臭く、その時は別件の採集旅行の最中で同行者が5名ほどおり、さらに泊まりを控えていた。このため全部持ち帰るのは自重して左上肢のみ切り取り、少し陸側に引きずって穴掘って埋めてそのうち取りに行こうということにして去った。が、数日後に天候が酷く荒れて流されてしまったっぽいので手元には左上肢のみが残ったわけである。この写真を見るたびに無理矢理言いくるめて全身持って帰るんだったと悔やんでいる。

 除肉と仮組はすっ飛ばして、引越しの負荷でバラけた状態から。パーツ配置を確認 してマスキングテープの上に置いていく。

 パズル的に組み合わさっているので、各パーツが回転せず、無理のない間隔で穴を開けられるよう簡単な設計図を描いた。実際の作業においていくつか変更はしたがだいたいこんな感じで針金が通っている。

 イルカ類の骨は煮ると何故かスカスカになるようだ。強度的な不安はあるが、ピンバイスを通すのはとても楽。コイル留した針金をどんどん入れていく。

 一通り通し終わったら間隔調整して軟骨代わりにホットボンドを盛り、肢端側をコイル留して仕上げる。

 著しく短縮した上腕骨は強固であり、上肢を動かす強力な筋肉と腱が接続する突起が大きく突き出ている。橈骨と尺骨は側面がキッチリと隙間なく噛みあうため手首を回転させる動きは不可能で、合わさって長方形の板状となる。指骨は座布団のような形状が多く、人差し指と中指にあたる骨の数が明らかに多い(Hox遺伝子がどうこうというのを聞いたことがある気がする)。上腕骨から肢端にかけての関節は可動性を失っており、一枚のヒレとして機能する構造となっている。このため組み上がったこの部分の表面は非常に滑らかに一連の骨が繋がる。

 肩甲骨は大きな扇状で、筋か何かが通るためっぽい空間が下部にある。

 

 前肢が変化した胸鰭、というのは可動域が減って一見単純な構造に見えるが、実際どのような構造をしていてどう筋肉が付いているのか、というのを考えようとすると、その構造を流線型の中に覆い隠してしまう鯨類であることも相まってなかなか想像するのが難しいなと思っている次第です。今度水族館でイルカを見る時は胸鰭の動きを注視してみます。

プリアプリダの午後

bottom of page